肝炎の主な原因

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B型肝炎について

B型肝炎とは

B型肝炎とは、B型肝炎ウイルス(HBV)に感染することで発症する肝炎のことです。
HBVは血液や体液を通じて感染します。主な感染経路としては、母子感染(垂直感染)と水平感染(主に成人後の感染)の2種類が挙げられます。 母子感染の場合、母親がB型肝炎ウイルスに感染していると、出産時の血液が赤ちゃんの体内に入ることで感染する場合があります。日本にはB型肝炎ウイルス感染者は110~140万人いると言われており、その多くは母子感染によるものですが、昭和61年(1986年)より全国規模での出生時のB型肝炎母子感染防止対策がとられているので、現在では新たな母子感染はほとんど発生していません。
水平感染の場合、以前は輸血が原因の血液感染や、予防接種での注射器の使い回し、医療従事者による針刺し事故による感染などが起きていましたが、医療環境の整備にともない現在ではほとんど発生していません。その他の原因として性交渉による感染、刺青(タトゥー)やピアスの穴開けなどで使用する器具の使い回し、覚せい剤などの注射の回し打ちなどが挙げられ、特に多いのが性交渉による感染と言われています。性交渉による感染では、従来の日本のウイルスとは異なる欧米型ウイルス(ジェノタイプA型)の感染例が増加しています。

B型肝炎ウイルスに感染するとどうなるのか?

成人後にB型肝炎ウイルスに感染した場合(水平感染)、ほとんどはウイルスが体外に排除されるのでキャリア化することはあまりありません。ですが、母子感染も含めて3歳ごろまでに感染した場合には、ウイルスが排除されずに肝臓に感染した状態となります。この状態で症状が現れず、一生を過ごすケースを「無症候性キャリア」と言いますが、このうち10%程度の方が症状を引き起こしてB型慢性肝炎となります。B型慢性肝炎となってもほとんど症状は現れませんが、適切な治療を受けずに放置していると肝硬変に移行し、さらに炎症が続くと肝がんを発症するケースもあります。
なお、B型慢性肝炎とならなかった方も「非活動性キャリア」という状態になり、炎症は抑えられているもののウイルス感染は続いているので、稀に活動が活発化して肝がんを引き起こすケースもあるので注意が必要です。

B型肝炎ウイルスの検査方法

B型肝炎ウイルスの感染の有無は、血液検査で確認することができます。少量の血液を採血するだけの簡単な検査で、検査結果は1週間程度でわかります。
血液検査ではまず、「HBs抗原」と呼ばれるB型肝炎ウイルスの外殻を構成するタンパク質を確認します。このHBs抗原が検出された場合(陽性)、血液中にB型肝炎ウイルスが存在することを意味し、初めてB型肝炎ウイルスに感染したケースと、持続感染しているケース(B型肝炎ウイルスキャリア)とに分けられます。
HBs抗原が陽性だった場合には、HBs抗体、HBc抗体、HBe抗原・抗体、HBc-IgM抗体の有無、血液中のウイルス量(HBV-DNA量)、肝機能などを調べるほか、腹部エコー検査などを実施してより詳しく感染状態を確認していきます。

B型肝炎の治療方法

B型肝炎の治療方法には、「インターフェロン(IFN)療法」や、核酸アナログ製剤を用いた「抗ウイルス療法」などがあります。ただし、これらの治療を行っても体からB型肝炎ウイルスを完全に排除することはできないため、十分な効果が得られなかった場合には「肝庇護療法」などを行って病状の進行を抑制したり、遅らせたりする必要があります。
なお、インターフェロン療法や核酸アナログ製剤治療は、医療費助成の対象となります。助成を受けた場合、その方の世帯所得に応じて自己負担1~2万円程度で治療が受けられます。

  1. インターフェロン療法
  2. インターフェロン療法とは、体内の免疫力を高め、ウイルスの活動を鎮静化させるインターフェロンα・βを注射で補う方法です。

  3. 核酸アナログ製剤治療
  4. B型肝炎ウイルスの増殖が抑制できる内服薬で、薬の効果でウイルス量を低下させて肝炎を鎮静化させます。

  5. 肝庇護療法
  6. 肝庇護薬を用いて肝炎を鎮静化させる方法です。肝細胞の破壊を抑えることで、B型慢性肝炎から肝硬変への移行を抑制したり、遅らせたりすることが可能となります。

C型肝炎について

C型肝炎とは?

C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することで起こる肝炎です。C型肝炎ウイルスに感染した方のうち、70%程度が持続感染(キャリア化)してC型慢性肝炎になるとされています。
C型慢性肝炎ではほとんど自覚症状は現れませんが、適切な治療を受けずに放置していると、肝臓の組織が破壊されて肝硬変に移行し、さらに時間が経過すると肝がんになる可能性があります。日本では100人に1~2人の割合でC型慢性肝炎患者・C型肝炎ウイルスキャリアがいるとされており、「21世紀の国民病」とも言われています。
C型肝炎ウイルスは、B型肝炎ウイルスと比べて感染力が弱いため、性交渉で感染することはあまりありません。また、母子感染の確率も低いとされています。
C型肝炎ウイルスは主に体液や血液などを介して感染します。昭和64年/平成元年(1989年)にC型肝炎ウイルスが発見されるまでは、感染者の血液を用いた輸血や血液製剤、汚染された注射器・注射針による医療行為などで感染していましたが、医療環境の整備にともない現在では医療行為による感染はまず起こりません。現在、考えられる感染経路としては、刺青(タトゥー)やピアスの穴開けなどで使用する器具の使い回しや、覚せい剤などの注射の回し打ちなどが挙げられます。

C型肝炎ウイルスに感染するとどうなるのか?

C型肝炎ウイルスに感染した方のうち、30%程度はウイルスが体外に排除されて治癒しますが、残り70%程度は持続感染(キャリア化)し、多くのケースでC型慢性肝炎になります。一度慢性化すると自然治癒することはほとんどなく、そのまま放置すると肝硬変に移行し、さらに時間が経過すると肝がんへと進展します。

C型肝炎ウイルスの検査方法

C型肝炎ウイルスの感染の有無は、血液検査で確認することができます。少量の血液を採血するだけの簡単な検査で、検査結果は1週間程度でわかります。検査の流れは次の通りです。

  1. HCV抗体検査
  2. HCV抗体の有無を確認します。検査結果が陽性の場合、C型肝炎ウイルスに感染したことがあります。陰性の場合、基本的にはC型肝炎の心配はありません。

  3. HCV-RNA検査
  4. ウイルス感染持続の有無を確認します。検査結果が陽性の場合、体にC型肝炎ウイルスが存在することを意味します。陰性の場合、過去に感染したことがあるものの、ウイルスは体から排除されています。

  5. ウイルス量・遺伝子型の測定
  6. 治療方針を決定するために、「HCV-RNA定量検査」によってウイルス量を調べたり、「ジェノタイプ」や「セログループ」などのC型肝炎ウイルスの遺伝子型を判定したりします。

  7. 肝機能・状態の確認
  8. 血液検査(AST{GOT}、ALT{GPT}、血小板など)、画像検査(エコー、CT、MRI)、必要に応じて腹腔鏡検査や肝生検などを行って肝臓の働きや状態などを確認します。

C型肝炎の治療方法

以前のC型肝炎の治療方法では、「インターフェロン(IFN)療法」「ペグインターフェロン単独療法」「ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法」などがありますが、最近ではインターフェロンを使用しない「インターフェロンフリー療法」が主流となりつつあります。インターフェロンフリー療法では内服だけで高い効果が期待でき、治療期間も短く、副作用もほとんどありません。
インターフェロン療法などが適応とならない方には、肝炎の沈静化を目的に「肝庇護療法」などを行う場合もあります。
現在、適切な治療を受ければC型肝炎はほとんど100%治すことが可能となっています。さらにインターフェロンフリー療法などは医療費助成の対象となり、助成を受けた場合、その方の世帯所得に応じて自己負担1~2万円程度で治療が受けられます。

  1. インターフェロンフリー療法
  2. インターフェロンフリー療法とは、現在、C型肝炎の主流となりつつある治療です。ウイルスに直接作用して増殖を抑制したり、C型肝炎ウイルスを体から排除したりします。3~6ヶ月程度、毎日内服することで高い効果が期待でき、治療期間も短く、副作用もほとんどありません。

  3. ペグインターフェロン
  4. ペグインターフェロンとは、インターフェロンにポリエチレングリコールを結合させた治療薬で、酵素によるインターフェロンの分解を防ぐ作用があります。従来のインターフェロンよりも血中での持続時間が長く、週1回の注射で効果が期待できます。

  5. リバビリン
  6. リバビリンとはウイルスを攻撃する薬で、単独では効果はありませんが、ペグインターフェロンなどと併用することで作用が期待できます。

  7. 肝庇護療法
  8. 肝庇護薬を用いて肝炎を鎮静化させる方法です。肝細胞の破壊を抑えることで、C型慢性肝炎から肝硬変への移行を抑制したり、遅らせたりすることが可能となります。

脂肪肝

脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)

脂肪肝とは、肝臓に脂肪が蓄積されて正常な幹細胞が少なくなった状態です。軽度であれば肝機能にほとんど影響はありませんが、病状が進行すると肝機能障害が現れます。主な原因としてアルコールの過剰摂取などが挙げられます。
それと反対に、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は、アルコールをほとんど飲まないのに脂肪肝炎となる場合を言います。 主な原因としてあげられているのは、「肥満」「糖尿病」「高血圧」「脂質異常症」などです。 肥満や糖尿病の方は、インスリンの働きが鈍くなることが原因で肝臓に脂肪が溜まりやすくなります。また、肥満体型でない方も、不規則な食事生活や運動不足が原因で、肝臓へ中性脂肪がたまる場合があります。

肝硬変や肝がんに進展する可能性があります

脂肪肝のうち糖尿病などが原因であれば、それを改善することで治癒をはかることが可能ですが、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に関係する脂肪肝の場合には注意が必要です。非アルコール性脂肪肝炎は、肝硬変や肝がんに進展する可能性があります。脂肪肝だからといって軽視せずに、特にアルコールを飲まない脂肪肝では、定期的に検査を受けて肝臓の状態を確認されることをおすすめします。

その他の肝臓疾患

肝硬変

肝硬変とは、肝臓で持続的に炎症が起こり、肝細胞の破壊と再生が起こる中で、肝細胞の間に線維が出てきて肝臓が硬くなって徐々に小さくなる疾患です。B型肝炎やC型肝炎が主な原因ですが、アルコール性肝炎、自己免疫性肝炎、脂肪肝などが原因で起こることもあります。

自己免疫性肝炎

自己免疫性肝炎とは、免疫の異常などの何らかの原因で、肝細胞に慢性の炎症を起こし、肝細胞が破壊される病気です。
原因ははっきりしていませんが、女性に比較的多く発症し、症状が進行してしまうと、肝硬変や肝がんなどに発展してしまう恐れがあります。